人は「理解」しても行動しない─ 認知行動工学と行動変容について

前回の記事では、「理解したつもり」がどのように起きるのかについて、認知行動工学の視点から整理しました。

ただ実際の現場では、

「理解しているはずなのに、その通りに行動できない」

という場面も少なくありません。

例えば医療現場でも、

例えば医療現場でも、

  • 注意喚起を読んでいる
  • 危険性も理解している
  • 操作手順も知っている

それでも、確認を飛ばしてしまったり、いつもと同じ感覚で操作してしまうことがあります。

もちろん、単純な不注意として片付けられる場面もあるのかもしれません。

ただ今回の講演を聞きながら感じたのは、こうした問題の背景には、人間の認知や行動そのものの特性が関係しているのではないか、という点でした。

「理解」と「行動」は必ずしも一致しない

今回の講演では、「理解できたかどうか」と、「実際に行動できるかどうか」は別の問題である、という話も印象的でした。

人は、

  • 分かっている
  • 理解している
  • 危険も認識している

場合でも、必ずしもその通りには行動しません。

例えば、

  • 時間に追われている
  • 慣れている作業である
  • 以前問題が起きなかった
  • 周囲も同じように行っている

といった状況では、確認や注意が省略されてしまうことがあります。

実際、「今回は大丈夫だろう」という感覚で進めてしまうことは、医療現場に限らず、日常の中でも意外と多いのではないでしょうか。

特に医療現場では、アラートや確認項目が増えることで、“注意し続けること”そのものが負担になってしまう場面もあるように感じます。

「正しい情報」を増やすだけでは解決しない

こうした話を聞きながら感じたのは、

「正しい情報を伝えること」と、「人が実際に行動できること」は別なのだという点でした。

例えば説明書でも、

  • 情報を追加する
  • 注意文を増やす
  • アラートを表示する

といった対応だけでは、必ずしも行動変容には繋がりません。

むしろ情報量が増えることで、

  • どこが重要なのか分からなくなる
  • 読まなくなる
  • “見たつもり”になる

といったことも起こり得ます。

情報を増やせば安全性も高まるように思えますが、実際には、その情報量によって人の注意が分散してしまう場面もあるのかもしれません。

これは、前回の記事で触れた「理解したつもり」とも繋がっているように感じます。

行動を変えるためには「見せ方」も重要になる

私たちが医療イラストや説明図を制作する際にも、単に情報を整理するだけではなく、

  • どこへ視線を向けるか
  • どの順番で認識するか
  • 何を優先して理解するか

を意識する場面が少なくありません。

例えば、

  • 危険箇所だけ色を変える
  • 操作順を視線誘導で示す
  • 不要な情報を減らす
  • 重要な部分だけを強調する

といった工夫は、単に「見やすくする」ためだけではなく、

“行動しやすくする”

ための設計でもあるように感じます。

実際、現場では「情報として正しいか」だけではなく、

  • どこで止まるか
  • どこを見落としやすいか
  • どこで判断に迷うか

を考えながら調整する場面も少なくありません。

「理解」だけではなく、「行動」まで設計する

今回の認知行動工学のお話を通じて印象的だったのは、

人は、理解していても、その通りに行動できるとは限らない

という点でした。

だからこそ今後は、

  • 情報を増やす
  • 説明を追加する

だけではなく、

  • どう見せるか
  • どこへ注意を向けるか
  • どうすれば自然に行動できるか

まで含めた設計が、より重要になっていくのかもしれません。

私たち自身も、医療イラストや説明書制作を通じて、

「どう理解してもらうか」

だけではなく、

「どうすれば安全な行動へ繋がるか」

という点まで意識しながら、視覚表現を考えていく必要があるのではないかと、改めて感じました。

私たち有限会社エイドでは、医療イラストや説明書制作を通じて、「どうすれば複雑な情報を理解しやすく伝えられるか」という視点から、視覚設計や情報整理に取り組んでいます。

医療イラスト制作については、下記ページでもご紹介しております。

この記事を書いた人

有限会社エイド

大阪にあるイラストレーション制作に特化したデザイン制作会社です。2Dイラストレーションの制作から3Dモデル等の制作そこから派生する印刷物や企画書などのデザインをオールインワンで取扱いたしております。